「自译/官方短篇」After Stories(五条须久那&栉名安娜篇)

1L不多说了。
整个人状态不是很好。开学前被抓来翻译这篇文章,虽然这次的短篇是我个人很喜欢的安娜小天使,但还是想要抱怨某人那读不懂TPO的粗线条神经。
依旧是那句话,请不要无端随意转载,请不要用于商业化,非常感谢。
原文会在译文之后放出链接(需要VPN翻墙)和搬运。
萝莉正太组镇楼w


楼主 孤舟铃  发布于 2016-09-11 22:23:00 +0800 CST  
五条须久那&栉名安娜
著 来楽零

持续了一整个上午的雨已经彻底停了。须久那独自漫步在雨后的街道之中。他和紫现在正分头行动。

自从失去了那个秘密基地之后,须久那和紫也成了逃亡之身,两人就没有固定居所,在数个暂用的据点之中辗转往复。这之后该怎么办,两人还没有仔细的讨论过。是在等到现状稍稍平息之后在这附近找个能够藏身的屋宅呢,还是在已经失去了石板的当下,干脆离开关东地区生活呢,还是说如同浪人般流浪一番呢——

对于须久那而言怎么样都好。按紫所想来决定就行。并不是搪塞敷衍的把这些问题都推给紫。须久那现在的目的,就是寻找一个目标。流已经逝去,为了流的梦想而奔走的须久那已经没有目标了。所以现在得要找到那个目标才行。为了那,现在须久那身处何处都无所谓。

——还会在某处觉得仿佛自己回到了自己家中时的感觉的那一刻到来吗。

这么想着,须久那不由露出了苦笑。

虽然相当的缓慢,但须久那的异能的确在渐渐变弱。一想到这,须久那就觉得仿佛从流那里得到的一切都渐渐抽离身体散落而下般,一股无力的孤寂感猛地袭来。但这也意味着他的败北。

虽然现在还没有变弱的实感,但就这么持续让异能衰弱下去,总有一天须久那也会变成一个普通的小孩子吧。那对紫而言只会碍手碍脚而已。但即使如此紫似乎也准备一直带着须久那,这也让须久那稍感安心。

要向紫学习剑术。为了即使某一天自己没有了异能,也能够依靠自己的力量来战斗。

和紫约定的会合的时间还有一些空闲。在那之前虽是闲来无事,但须久那也没有到某个店内消磨时间的心情,须久那在人烟稀少的小路之中,寻了片没被雨水打湿的地面坐下。他从口袋里拿出了游戏机,打开了电源。


楼主 孤舟铃  发布于 2016-09-11 22:23:00 +0800 CST  
漆黑一片的液晶画面发出亮光,游戏开始了。这个游戏描述的就是一个勇者为了拯救世界而战的,陈腐而正统的故事。但是须久那并不讨厌这份陈腐。又简单易懂,而且他觉得拯救的英雄的确很帅气。

——但是流想创造的,并非是被选中的勇者才背负着世界而战的游戏,而是一个国王也好,公主也好,旅馆的老爷子也好村人A也好,大家都能够拥有力量,按自己的想法努力存活下去的世界。

“喔喔勇者啊 请务必 救救我们吧”

须久那心不在焉的眺望着小小的游戏画面之中,正恳求着勇者的村人。

“五条须久那”

无意间,从极近的地方听到了一声澄澈的声音。须久那抬起脸。

那是一名大概和须久那同年的,仿佛人偶般五官端正的少女,正双手支在膝上轻轻弯下腰,窥视着坐在地上的须久那。

在一瞬的呆愣之后,须久那立刻辨认出对方到底是谁,瞬间全身汗毛直立。

“《赤之王》栉名安娜……!”

——我个笨蛋!明明知道这里是《吠舞罗》和《Scepter4》的活动范围,居然还毫无戒备的就这么呆坐着!

怀着想要对自己啧啧咂嘴的心情,须久那微微直起身,随即,安娜后退了一步,仿佛要表明自己毫无敌意般举起双手。

“等等。我不想和你战斗或把你抓起来。”

须久那渐渐的站起身,盯着安娜。

“这样好吗。我可是《Jungle》干部的残党啊?”

“我也不是《Scepter4》。即使抓住你,也没用”

须久那戒心不减,仅仅解除了临战前的架势。

“……那么,你干嘛来搭话啊”

“因为很在意。你现在,在干吗”

“才不告诉你呢。为什么我得向敌人报告近况啊”

即使被毫不留情的拒绝了也不见她露出丝毫恶意,安娜大大的眼睛直直的仰视着须久那。看起来真的没有要针对须久那的意思。

奇怪的家伙,须久那想。明明是个小鬼居然还被选为了王权者,她果然是个怪人吧,但突然,须久那也注意到,流成为《王》似乎也和眼前这个少女同样是在孩提时代。

流的王大人经历,比须久那的人生还要长。

不由的,须久那心中也一阵释然。

环视四周,须久那找到了一台自动贩卖机。他走到那边,安娜也小步跟上。

须久那用自动贩卖机买了两罐可可,一罐扔给了安娜。

“只有在喝饮料的这段时间,双方休战”

须久那像是想要个不作出敌对行为的借口般这么说道,安娜小小的点了点头,打开了可可罐。


楼主 孤舟铃  发布于 2016-09-11 22:24:00 +0800 CST  
“……现在,还在做《Jungle》的善后。虽然这么说,也没什么特别要做的事情。这之后……也不知道要做什么”

对刚才被拒绝回答的安娜的询问,须久那干巴巴的回答道。安娜也只是“恩”的点了点头。

“我们现在,和之前相比也没有什么改变。但我想这之后会渐渐的改变吧。”

像是作为回礼般,安娜也说了自己的情况。须久那仿佛对此毫无兴趣,用一声“哼恩”附和道。

渐渐的改变。这是当然的。在石板被破坏了的现在,《王》也好氏族成员也好他们的状态肯定都在渐渐变化吧。

两人一时间无言,靠着大楼的墙壁,沉默着喝着可可。明明特地前来搭话,但安娜似乎并没有特别想要维持对话的意思。和敌人并肩安静的啜饮饮料,两人度过了一段奇妙的时光。

罐中的饮料也渐渐减少,小口喝着沉积在底部,满含甜味的最后一点可可,须久那不经意间开口问道。

“你有想过,用《王》的力量来改变世界吗”

安娜看着须久那,缓缓的摇了摇头。

“没有。我并不是那样的伟人。只是,想要保护重要的东西。”

“这就是你和流战斗的原因吗”

“既然身为《赤之王》,就想要显出相符的帅气”

“你想充英雄啊”

虽然自己吐露出嫌恶的台词,但安娜的回答中却感觉不到厌恶感。对那份单纯,须久那甚至觉得有些心情畅快。


楼主 孤舟铃  发布于 2016-09-11 22:24:00 +0800 CST  
须久那明白自己的存在对于当下的世界是恶的一方。是将世界搅成一团乱的恶。但是流却并不觉得自己是恶的一方。相信在这个乱成一团的世界之中能够孕育出一个真正的世界。须久那就是喜欢那样的流。

流到底是否是正确的,现在已经任何人都无从知晓了。

须久那喝完了可可,将空罐扔进了垃圾箱之中。安娜也跟着扔掉了。

休战时间结束了。

“你,虽说没有和我战斗的意思,但是至少对我有心存愤恨吧”

须久那转身直面安娜,挑拨般说道。安娜虽然没有回答,但眼神却是肯定的。

“那揍我也行啊”

像是放弃了般,须久那说道。

随即,“嗒”的一声,红色的靴子猛地迈出了一步。

运用腰部的力量大幅度挥动的小小的拳头,击中了须佐那的左脸颊。

这是令人想象不出是这个人偶般的少女挥出的拳头——第三王权者的一拳。

须久那被揍的横飞出去,撞上了墙壁瞬间崩塌了。

因为对方说可以揍所以就揍了。栉名安娜是一名非常坦率的少女。

——没搞错吧。这绝对不是十二岁的女人的拳头啊。不过这也是理所当然的,即使没了达摩克利斯之剑,这家伙也是能和流一较高下的《王》啊。

晕晕乎乎的脑袋这么思考着,须久那抬起脸。

还摆着出拳时的架势的安娜,像是心情舒畅了不少般,再度恢复到人偶般直立着的姿势。

楼主 孤舟铃  发布于 2016-09-11 22:25:00 +0800 CST  
须久那吐掉了积在口中的鲜血,站起身,“啪啪”的拍打着肮脏的外套。

「…………」

那么,该怎么组织台词离开这里呢,这么想着的时候,安娜那仿佛玉珠般的瞳孔直直的看向须久那,说道。

“你也可以,揍我”

“哈啊?”

须久那一脸诧异。安娜不带丝毫动摇的视线投向须久那,缓缓的说道。

“我是知道破坏了石板后比水流会死去,还去实行那个计划的”

听着少女平静说出的话语,须久那的心头激烈的震荡。一瞬间,各种情感喷涌而上。愤怒,悲伤,绝望。这些感情翻搅扯痛须久那胸口内侧,他双眼发热,双手握拳,用力咬着臼齿,尽力压下泪如泉涌的冲动。

但是,这份激烈的情感并没有持续多久。

忽的,须久那的肩膀卸去了力气。

“……谁会揍毫无战意的女人啊”

他语调无力的说道。安娜沉默的注视着须久那。须久那抬起脸,回望着安娜。

“而且,我们是敌人,所以才战斗。……然后,我们输了。仅此而已。我现在没有揍你的理由。我才不会因为输了游戏就在场外斗殴呢。”

但是。话锋一转,须久那眯起眼睛。

“如果再度和你对峙的话,那个时候我会全力一战的”

“我知道了”

安娜点点头,收下了须久那的这句话语。

没有更多需要与安娜交流的话语了,须久那准备折返离开。从渐渐远离的背后,能感觉到安娜也迈出了步伐。

忽的,须久那止住脚步,转身回头。

“栉名”

须久那叫住那个红色外套的背影。安娜回过头。

“你,完全不在意吗?石板被破坏,不再有《王》存在。”

安娜像是陷入了沉思般沉默了一段时间。

“第三王权者的红色,非常恐怖。但是即使如此对我而言,也是非常重要的东西。……但是,我想这样就行了。我不后悔”

一边斟酌着话语,安娜缓缓地说道。

“是吗”

须久那简短的回答道,准备再次前行。

“须久那”

这次是安娜叫住了须久那。因为突然被叫了姓氏后的名字,须久那脚下不由的打了一个小小趔趄,一边回头看向安娜。

“能够,再和你说话就好了”

这么说着,安娜露出了小小的微笑。须久那不禁一阵动摇,

“才、才不要呢”

一边这么回答道,这次终于踏出步伐离开了这个地方。


楼主 孤舟铃  发布于 2016-09-11 22:25:00 +0800 CST  



和紫汇合时,紫看着须久那的脸不禁睁圆了眼睛。

“啊啦。这是怎么了,你这张脸”

“吵死了。没事”

像是要防止狠狠揍了一拳的左脸颊的痕迹不被紫看见般,须久那干脆的转向别处。紫也不再过多的追究,轻笑道。

“如果被欺负了的话就对紫哥哥说吧。我会好好嘲笑你的”

“这种时候该笑吗!”

看着须久那怒气冲冲的模样,紫一脸愉快的迈出步伐。两人并排前行中,紫哼唱起《下雨》这首童谣。

须久那仰望蓝天,

“雨,已经停了呢”

这么说道,紫随即用轻快的声音回答道。“是啊”

楼主 孤舟铃  发布于 2016-09-11 22:26:00 +0800 CST  
————End————
本篇是来楽零写的实在帮大忙了。他的文字很好懂。
就如1L所说状态不是很好,句意理解应该没有问题(最多只会有因为个的人翻译习惯调整了句式),但错别字可能会比较多。
安娜简直是受到了尊的真传啊……原本对付宗像的一招友情破颜拳也是传承到了安娜手里。
从来没想到安娜居然也会有一边喊着“欧拉欧拉欧拉欧拉”一边和别人大战三百回合的桥段。
感觉那样的女王安娜……也很威武霸气,很不错啊hshs……咳,糟糕的本性暴露就到此为止。接下来放原文吧。

楼主 孤舟铃  发布于 2016-09-11 22:33:00 +0800 CST  
著 来楽零
午前中に降っていた雨はすっかりやんでいた。スクナは雨上がりの道を一人でそぞろ歩く。紫とは現在別行動中だ。 あの秘密基地を失ってから、スクナと紫は逃亡中の身だということもあって、確かな居所を定めることはせずに複数ある仮初めの拠点を転々としている。これからどうするかは、まだちゃんと話してはいない。ある程度状況が落ち着いたらこの辺りで潜める家を探すのか、あるいは石盤がなくなった今、関東からは離れた地で暮らすのか、それとも流れるように放浪するのか――
スクナにとってはどうでもよかった。紫が思うように決めればいいと思う。別に投げやりになっているわけではない。スクナの今の目的は、目的を探すことだからだ。流がいなくなって、流の夢を自分の夢にして走ってきたスクナにはもう、目指す場所がない。だから今はそれを探さなければならない。そのための場所は今はどこだって構わない。
――いつかまた、どこかを自分の家みたいに思えるときが来んのかな。
考えて、スクナは苦笑した。
ほんの少しずつではあるが、スクナの異能は弱まっているらしい。そのことについて考えると、流からもらったものが体からこぼれ落ちていくような気がして泣きたくなるようなやるせなさに襲われる。だがそれが敗北というものだった。
現状ではまだ、弱くなったという実感はないが、このまま異能が薄れ続ければいずれスクナはただの子供になるのだろう。紫にとって足手まといでしかない。それでも紫がスクナを連れていってくれる気があるらしいことにほっとしてもいた。
紫から剣を習おうと思う。いつか異能がなくなったとしても、自力で戦えるように。
紫と合流する予定の時間まで、まだ間があった。それまではやることもなく、かといってどこか店に入る気分でもなくて、スクナは人通りの少ない通りの、雨に濡れていない路面に腰を落とす。ポケットから携帯ゲーム機を取り出して電源を入れた。
真っ黒だった液晶画面が明るくなり、ゲームが始まる。勇者が世界を救うために戦うという、陳腐でオーソドックスなストーリーのゲームだ。だがスクナはこの陳腐さは別に嫌いじゃない。わかりやすいし、何かを救うヒーローというのは確かにカッコイイものだと思う。
――だけど流が作ろうとしたのは、選ばれた勇者が世界を背負って戦うゲームじゃなくて、国王も、姫も、宿屋の親父も村人Aも、みんなが力を持って思うように生き抜く世界だった。
『おお ゆうしゃよ どうかわれわれを たすけてください』
小さなゲーム画面の中で勇者に懇願する村人を、スクナはぼんやりと眺めた。
「五條スクナ」
ふいに、すぐ近くから澄んだ声が聞こえた。スクナは顔を上げる。
スクナと同年代くらいの、人形のように整った顔をした少女が、膝に手をやり軽く腰をかがめて、座り込むスクナをのぞき込んでいた。
スクナは一瞬ぽかんとし、直後、相手が誰なのかを認識して、ざわりと全身の毛を逆立てる。
「《赤の王》櫛名アンナ……!」 ――バカか俺は! 《吠舞羅》も《セプター4》もうろつく場所だってわかっていたくせに、何を無警戒にぼーっと座り込んでた!
自分に舌打ちしたい気分でスクナが腰を浮かせると、アンナは一歩後ろに下がって敵意がないことを示すように両手を挙げた。
「待って。戦ったり捕まえたりする気は、ない」
スクナはじりじりと立ち上がり、アンナを見据える。
「いいのかよ。《jungle》幹部の残党だぜ?」
「私は《セプター4》じゃないから。あなたを捕まえても、仕方ない」
スクナは警戒は解かないまま、臨戦の構えだけは解いた。
「……じゃあ、なんで声かけた」
「気になったから。今、どうしてるの」
「言わねーよ。なんで敵に近況報告すんだよ」
突っぱねても気を悪くする様子もなく、アンナは大きな目でじっとスクナを見上げている。本当にスクナをどうこうする気はないようだった。
変な奴、と思う。ガキのくせに王権者なんてものに選ばれるのはやっぱり変人なのかなと思い、そういえば、流だって《王》になったのはこの目の前の少女と同じ子供の頃だったのだと改めて気づく。
流の王様歴は、スクナの人生よりも長かったのだ。
なんとなく、スクナの中からも毒気が抜けた。
スクナは周りに視線を巡らせ、自販機を見つけた。そちらへ歩くと、アンナもとことことついてくる。
スクナは自販機でココアを二本買い、一本をアンナに放り投げた。
「それ、飲む間だけ、休戦」
敵対行動を取らないでいる言い訳が欲しくてそう言うと、アンナはこくりと頷き、ココアの缶を開けた。
「……今は、《jungle》の後始末してる。つっても、やれることあんまねえけど。これから先のことは……わかんねぇ」
さっき突っぱねたアンナの問いに、スクナはぼそぼそと答えた。アンナはただ「うん」と頷く。
「私たちは、今は特に、前と変わってない。でもそのうち少しずつ、変わっていくと思う」
お返しのようにアンナも言った。スクナは「ふーん」とどうでもよさそうな相槌を打つ。
少しずつ変わっていく。当たり前だ。石盤が破壊された今、《王》もクランも在り方が変わっていくだろう。
二人はしばらくの間、ビルの壁に寄りかかり、黙ってココアを飲んだ。わざわざ声をかけてきたくせに、アンナは特に会話を続けようとはしなかった。敵対者同士が並んで静かに缶の飲料を傾ける、奇妙な時間が流れる。
缶の残りも少なくなり、底に甘さが沈殿した最後のココアをすすりながら、スクナはふと口を開いた。
「お前は、《王》の力で世界を変えてやろうと思ったこととかないの」
アンナはスクナを見て、ゆっくりと首を横に振った。
「ない。私はそんな大きなものじゃなかった。ただ、大事なものを守りたかった」
「そんで流と戦ったわけ」「《赤の王》であるからには、格好良くいたかった」
「ヒーロー気取りかよ」
嫌みのようなセリフは吐いたが、アンナの言葉に嫌悪は感じなかった。その単純さを小気味よくさえ思った。
スクナは、自分たちが現状の世界にとって悪なのだという自覚があった。世界をぐちゃぐちゃにする悪だ。だけど流は自分を悪だなんて思っていなかった。ぐちゃぐちゃになった中から真の世界が生まれるのだと信じていた。スクナはそんな流が好きだった。
流が正しかったのかどうかは、もう誰にもわからない。
スクナはココアを飲み干し、空き缶をゴミ箱に捨てた。アンナもそれに続く。
これで休戦時間はおしまいだ。
「お前、俺と戦ったりする気はないっつったけど、むかついてることくらいあんだろ」
スクナはアンナに向き直り、挑発的に言った。アンナは答えなかったが、目が肯定していた。
「殴ってもいいぜ」
放り投げるようにスクナは言う。
すると、だん、と赤い靴が一歩踏み込んだ。
腰を使って大きく振りかぶられた小さな拳が、スクナの左頬にヒットする。
人形めいた少女の拳とは思えない――第三王権者の拳だった。
スクナは横様に吹っ飛び、壁にぶち当たって崩れ落ちる。
いいと言われたので殴った。櫛名アンナはとても素直な少女だった。
――マジかよ。十二歳の女のパンチじゃねえぞ。当たり前か、ダモクレスの剣を失ったとはいえ、こいつ流とだってそこそこ戦った《王》だった。
ぐわんぐわんと揺れる頭でそんなことを考えながら、スクナは顔を上げる。
拳を振り抜いたままのポーズだったアンナは、どこか吹っ切れた様子で、また人形のようにまっすぐ立つ姿勢に戻った。
スクナは口の中に溜まった血を吐き捨て、立ち上がると、汚れたコートをパンパンとはたく。
「…………」
さて、なんと挨拶をして立ち去るべきか、と考えていると、アンナがビー玉のような瞳をまっすぐにスクナに向けて言った。
「あなたも、殴ってもいい」
「はぁ?」
スクナは怪訝な顔をする。アンナは揺るがない視線をスクナに注いだまま、ゆっくり口を開いた。
「私は、石盤を壊したら比水流が死ぬと知っていて、あの計画を実行した」
静かな少女の言葉が、スクナの情動を激しく揺さぶった。一瞬にして様々な感情が噴き上がる。怒り、悲しみ、絶望。それらがスクナの胸の内側を掻き回して痛みを与え、目が熱くなった。両の手を拳に握り、強く強く奥歯を噛みしめて、突き上げてきた涙の衝動を飲み込む。 だが、激情は長くは続かなかった。
すとん、とスクナの肩から力が抜ける。
「……戦意もない女、殴れるかよ」
力ない口調で言った。アンナは黙ったままスクナを見つめ続けている。スクナは顔を上げ、アンナを見つめ返した。
「それに、俺たちは敵だった。だから戦った。……そんで、俺らが負けた。それだけだ。俺が今お前を殴る理由はねえ。ゲームに負けたからって場外で殴るような真似はしねーよ」
けど。と言って、スクナは目を細めた。
「またお前と対立することがあったら、そんときは全力で戦う」
「わかった」
アンナはスクナの言葉を受け止め、頷いた。
それ以上アンナと交わすべき言葉もなく、スクナは踵を返した。遠ざかっていく背後で、アンナもまた歩き出す気配を感じる。
ふと、スクナは足を止めて振り返った。
「櫛名」
赤いコートの背中に声をかける。アンナは振り向いた。
「お前は、全然平気なの? 石盤壊して、《王》でもなくなって」
アンナは少しの間考え込むように黙った。
「第三王権者の赤は、怖いものだった。それでも私にとって、とても大事なものでもあった。……けど、これでよかったと思ってる。後悔は、しない」
言葉を選びながら話すように、ゆっくりとアンナは言った。
「そう」
スクナは短く答え、再び歩きだそうとする。
「スクナ」
今度はアンナの声がスクナを呼んだ。いきなり下の名前で呼びつけられたことにわずかにたじろぎながらアンナを見る。
「また、話せるといいな」
そう言って、アンナはかすかに微笑んだ。スクナはなんとなく動揺してしまいながら、
「や、やだよ」
と言って、今度こそその場を離れるべく足を踏み出した。



紫と合流すると、紫はスクナの顔を見て目を丸くした。
「あらまあ。どうしたの、その顔」「うっせ。なんでもないよ」
ぶん殴られた左頬の跡を紫から背けるように、ぷいとそっぽを向く。紫はそれ以上は詮索せず、くすりと笑った。
「いじめられたら紫ちゃんに言いなさいよ。笑ってあげるから」
「笑うのかよ!」
ぷりぷりと言うと、紫は楽しげな顔をして歩き出す。並んで歩いていたら、紫が鼻歌で童謡の「あめふり」を歌い出した。
スクナは青い空を見上げ、
「もう、雨はやんでるぜ」

と言うと、紫は軽やかな声で「そうね」と答えた。


K官网:http://k-project-come-back.jpn.com/after_stories/

楼主 孤舟铃  发布于 2016-09-11 22:35:00 +0800 CST  

楼主:孤舟铃

字数:8246

发表时间:2016-09-12 06:23:00 +0800 CST

更新时间:2017-04-06 13:55:37 +0800 CST

评论数:75条评论

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